2025.7.2

バブル経済と時計産業——1980年代からバブル崩壊までの時計の歴史

バブル経済と時計産業——1980年代からバブル崩壊までの時計の歴史

1980年代から1990年代初頭、日本はバブル経済の絶頂期を迎え、華やかな消費文化が広がっていました。
高級ブランドブームが巻き起こり、時計業界でも 「ステータスとしての時計」 が注目を集めます。
しかし、1990年代に入るとバブルは崩壊し、時計市場も大きな変革を迫られることになりました。
今回は、バブル期の時計ブームと、バブル崩壊後に訪れた時計業界の変遷 について振り返ります。

■1980年代——クオーツ時計の黄金時代と高級時計ブーム

1969年にセイコーが世界初のクオーツ腕時計を発表したことで、1970年代には世界の時計市場がクオーツ時計へと移行しました。
1980年代に入ると、日本の時計メーカーはさらに技術を磨き、より精度が高く、デザイン性にも優れたモデルを次々と発表します。

✔️1983年:カシオ「G-SHOCK」誕生
耐衝撃性を持つスポーツウォッチとして登場し、特に若者層を中心に人気を集めるようになりました。

✔️1988年:セイコー「AGS」(後のキネティック)発表
電池交換不要の機械式とクオーツの融合技術が登場し、新たな市場を開拓しました。

■バブル経済と時計のステータスシンボル化

1980年代後半、日本はバブル経済に突入し、人々の消費意欲が旺盛になりました。
この影響で、時計も「単なる時間を知る道具」ではなく「成功の証」としての役割 を持つようになります。

✔️ロレックス・オメガなどの海外高級時計ブーム
✔️国産時計も高級路線へシフト(グランドセイコー復活など)
✔️ヴィンテージウォッチの人気が高まり、コレクター市場が形成

この時期、ロレックスの「デイトジャスト」や「サブマリーナ」が富裕層を中心に人気を博し、日本でも並行輸入品の市場が拡大。都内の百貨店や並行輸入業者の店には、高級時計を求める人々が殺到しました。
また、国産時計メーカーも高級時計市場に挑戦し、1988年にはセイコーが「グランドセイコー」を復活させ、時計の精度を極限まで追求する姿勢を明確にしました。

■1990年代——バブル崩壊と時計市場の変化

1990年代に入り、バブル経済は崩壊。
それまでの 「高級ブランド志向」 は急激に冷え込み、日本の時計市場も変革を迫られます。

✔️高級時計の売れ行きが鈍化し、手頃な価格の時計が求められるように
✔️海外ブランドの時計市場が縮小し、国内ブランドの市場戦略が見直される
✔️デジタル時計・スポーツウォッチ市場が拡大し、実用性が重視される

この変化の中で「実用性を重視した時計」が再び注目を集めるようになります。

✔️カシオG-SHOCKの逆輸入ブーム(1990年代後半)
✔️セイコーのキネティックシリーズが普及し、エコロジー志向が高まる
✔️シチズンがソーラー駆動の「エコ・ドライブ」を本格展開

また、消費者の価値観の変化により、 「実用性+ファッション性」を兼ね備えた時計 が求められるようになり、
スウォッチ(Swatch)のようなカジュアルウォッチブランドも市場に影響を与えました。

■まとめ——バブル経済がもたらした時計文化の変化

1980年代から1990年代にかけての時計市場は、バブル経済の影響を強く受けた時代 でした。

✔️1980年代:クオーツ時計の発展と高級時計ブーム
✔️バブル期:時計がステータスシンボル化し、ブランド時計が人気に
✔️1990年代:バブル崩壊で消費スタイルが変化し、実用性が求められるように

バブル経済がもたらした 「時計の価値の変化」 は、その後の日本の時計市場の発展に大きな影響を与えました。
現在、日本の時計市場には、高級時計・実用時計・カジュアルウォッチという3つの分野が共存しています。
この多様性の背景には、1980年代から1990年代の時計市場の変遷があったのです。


とけいや時左衛門
所在地:〒165-0026 東京都中野区新井1-30-8
営業時間:11:30~18:00
定休日:火曜日・水曜日


▼オンラインストアはこちら